血糖値386からの挑戦状: アマリール嬢の甘い鞭

2018年8月23日木曜日

アマリール嬢の甘い鞭

彼女との出会いはきっと必然だったのだろう。
　
私が足の病で点滴を受けている時、担当医に紹介されたのが最初だった。

「アマリール。」
　
彼女は自分の事をそう呼んだ。伏し目がちな、口数の少ない女性だった。
きっかけは些細なものだったが、やはり運命だったのかもしれない。
私はそれから連日、休み無く彼女と遭う事になる。
　
朝な夕なに彼女は必ず私の元を訪れる。
小さな白い鞭を持って。
　
彼女の仕事はシンプルだ。
使い慣れたその小さな鞭を使って私の膵臓を叩き、その働きを即すのだ。
　
「もっと... がんばって....」
　
彼女の鞭は、膵臓に刺激を与える。それはごく軽いものだったが、24時間その効果か薄れる事無く続く。

私の膵臓は始めこそ彼女の鞭に従順だったが、しばらくすると小さな悲鳴をあげるようになっていった。このまま膵臓は少しずつ弱っていくのだろうか。

「さぼっちゃだめ...」

彼女は意に介する風も無く、鞭はピアノの鍵盤を叩くように実に軽く、そして休みなく膵臓を刺激を与え、次第に弱っていく膵臓とは逆に、私は何時しかそれに慣れていった。

月は2度ほど満ち欠けを繰り返したが、雨の日も風の日も、昼夜を欠かさず、常に変わらず彼女は私の為だけに小さな鞭を振り続けたのだった。
　
二人の関係は永遠に続くかと思われたある日、
彼女は来しなに私にこう言った。

「今日でおしまい。」

え.... 今なんて？

「もう来ない。」
　
其れは何故？
私は少しうろたえ、俯く彼女に訊ねた。
彼女は悲しげに私を睨みながら
絞り出すようにこう言った。

「...貴方が... 糖質制限を始めたから！」
　
そう言うと彼女はくるりと踵（きびす）を返し、足早にもと来た道を戻り始めた。
　
私は...　私はその場に立ち尽くし、ついに私は遠ざかる彼女に声をかける事が出来なかった。
　
そう、糖質制限を始めた私には、彼女を引き留める資格はなかったから。

今までありがとう。
アマリール。

...そしてさよなら
アマリール。

(･ω･)ノ”

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アマリール錠
SU剤。経口血糖降下剤。
すぱ郎が最初に処方された薬。
膵臓に作用し、インスリン分泌を促進します。
HbA1cの改善効果があり、2型糖尿病の治療に用いられます。
糖質制限食をしている方は低血糖に注意です。
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はー、ひと夏の思い出。

(･ω･)
　
　
　